【POTLUCK FES’25 Spring】今回も激論。地域のこれからを考える1dayをレポート!

2025年3月26日、POTLUCK FES’25 Springが東京ミッドタウン八重洲で開催されました。
全国から地域の可能性を広げるプレイヤーが集結して議論と交流を行うというコンセプトの下ではじまったPOTLUCK FESも今回で5回目になります。開催当日は最高気温25℃を超える季節外れの夏日。予想外の陽気につられたのか、会場には参加者の皆さん明るい表情が並びました。
さまざまな地域の方たちが地域の食の楽しみながら笑顔で挨拶を交わし、真剣な表情で地域のこれからをテーマにした議論に耳を傾ける。今回も東京の中心で地域を叫ぶ?とても有意義な時間となりました。
盛りだくさんすぎて一部とはなってしまいますが、当日の様子と議論の内容をレポートします!
ポットラックフェス開催!の、その前に…全国の自治体職員が集結!
今年から地方自治体向けのパートナーシップ制度「POTLUCK パブリックパートナー」もはじまり、より地域との関わりを深めていこうとしているPOTLUCK YAESU。POTLUCK FESの開催に先駆けて、同日の午前中に「全国自治体 地域経済戦略サミット by POTLUCK YAESU」が開催されました。
自治体職員限定イベントだけに、リアルで実践的なさまざまなお話を聞くことができました。自らの業務や地域のこれからに直接かかわるお話だけに、講演やトークセッションを聞く皆さん、真剣な面持ちです。


さあ、知と経験の宴のはじまり!オープニングは「NEXTユニコーン」が登場
正午になると、POTLUCK FES’25 Springの本編が開始。お馴染みの「P」マークが会場を埋め尽くし、来場者の皆さんを出迎えます。
皆さんが交流を深める5階のラウンジは、こんな感じ。



心地よい音楽をBGMに、地域の食と会話を楽しむ時間。
毎回思うのですが、聴きたいセッション、話したい人、食べたいもの…、ありすぎて収集つきません!
今回はさらに新しい試みとして、青山ブックセンターさんのご協力で「POTLUCK書店」を開設。登壇者の推薦本やセッションのテーマに添った本を選書いただいています。

13時になると、いよいよオープニングセッションが開始! 累計250億円の資金調達を行いNEXTユニコーンと注目されるPowerX, Inc. CEO 伊藤正裕さんにご登壇いただきました。
岡山県玉野市に「Power Base」という日本最大級の蓄電池組立工場を建設するというPowerX, Inc.。

伊藤さんは「企業誘致にはハード(インフラ)とソフト(生活環境)の両立が不可欠」だと述べました。また、地域との共存共栄の具体例として、「昔ベンチャーが生まれて大企業になった地域は潤っている」と京都や福岡の事例を挙げ、10年後にスポンサー企業となるようなベンチャーを地域から育てる必要性を説きました。
メガベンチャーの誕生は、これからの世の中で真に必要とされる課題と対になるもの。課題多き地域だからこそ、ベンチャー企業とのベストマッチングが生まれるのかもしれませんね。
みんなで地域を考えよう。ディスカッションステージをPICK UP!
伊藤さんの講演を皮切りに「起業家」「ファイナンス」「スポーツ」「被災地復興」「自治体経営」「ネイチャーポジティブ」などさまざまなテーマでのトークセッションが行われました。
その中で、今回初の試みとなったのが、ディスカッションステージで行われた2つのセッション。登壇者は互いに向き合い円になって議論を交わす状態に。1対Nの講演ではなく、これからの地域を考える議論に重きを置いたステージです。
「新しい地域金融」の幕開け:10億円ビジネスを生む、新しいお金の集め方・使い方

登壇者
モデレーター:阿座上 陽平(Zebras and Company 共同創業者・代表取締役 / ユートピアアグリカルチャー プロデューサー / ブラックスターレーベル 理事)
岡 雄大(株式会社Staple / GOOD SOIL株式会社 代表取締役)
下川 大和(三菱UFJ信託銀行株式会社 フロンティア事業開発部インフラ事業室 Senior Manager)
藤本 孝(山口キャピタル株式会社 シニアディレクター)
野金 将行(株式会社REDGE CAPITAL 代表取締役)
本セッションでは、地域発の10億円規模ビジネスを創出するための資金調達のあり方をテーマに、地域の開発や金融の現場で活躍する5名が議論を交わしました。
はじめに、Staple代表の岡雄大さんは、自身が広島県瀬戸田で展開するホテル開発について紹介。徒歩圏内での小規模な開発を連続的に行うことで、地域内に経済圏を育て、資金の循環を生むことを目指すという同社のビジョンについて話しました。「地域の不動産は10%近い利回りも見込める。都心との利回りの差を根拠に、地方へ資金を流す理由をきちんと説明することが重要」と述べ、地域における事業のリスクとリターンを「翻訳」することの重要性を強調しました。

山口キャピタルの藤本孝さんは、「地域金融機関がエクイティ投資の視点を持つことが、これからますます重要になる」と語ります。一方で、岡氏のようにロジックと実績を揃えて示せる起業家は少なく、「(まだ実績がない企業への)1件目の投資を行うハードルは高く、組織内での理解を得るのにも苦労する」とも明かしています。

若者×事業承継で地方創生を目指すREDGE CAPITALの野金将行さんは、「EBITDAが5000万〜1億円規模の企業が地方には多数存在するが、金融の目線がそこに届いていない」と問題提起しました。その解決策として、グループ一体で複数の企業を連携させて育てる自社モデルを紹介。「地方から年収1000万円企業を生み出すことが、地域の誇りや人材のUターンにつながる」と展望を語ります。

三菱UFJ信託銀行の下川大和さんは、歴史的建造物の利活用を例に、地域の事業に対する投資の可能性に触れました。「過去の実績に加えて、事業の持続性や広がりを描くストーリーがあれば、投資の判断もしやすくなる」と述べ、信託銀行としての新たなスタンスを示しました。

セッションの最後には、「ファイナンスには未来を語る力が必要だ」「地域を良くする構想と、収益性のバランスが共感と投資を呼び込む」という意見が登壇者から多く聞かれました。エクイティ、デット、補助金、信託など多様な資金を組み合わせた“総力戦”の金融モデルが、いま地域で芽吹き始めています。
観光業の盲点を突け!「マーケティング志向」で発想転換、地域資源を世界価値に変える

登壇者
モデレーター:永谷 亜矢子(株式会社an 代表取締役 / ナイトタイムエコノミー推進協議会 理事 / 立教大学 経営学部 客員教授)
河田 敦弥(観光庁 観光戦略課長)
河東 英宜(株式会社かまいしDMC 代表取締役)
⻄谷 雷佐(株式会社インアウトバウンド東北 代表取締役)
日本の観光業はインバウンドの急成長とともに注目される一方で、地域への誘客や産業としての持続可能性に多くの課題を抱えています。
観光庁の河田敦弥さんは、コロナ後のV字回復によって訪日外国人数が3700万人、消費額が8兆円に達したと報告。「今や観光は自動車産業に次ぐ外貨獲得手段」と語りつつ、「その7割が東京・大阪・京都など三大都市圏に集中している。地方への分散が急務」と強調しました。

一方、現場で観光を牽引するプレイヤーは、その地域性と向き合いながら独自の戦略で挑戦を続けています。釜石DMC代表の河東英宜さんは「観光とは地域のためのものであり、来てほしい人を明確に呼び込むことが重要」と語り、研修旅行や防災ツーリズムなど、BtoBを中心とした持続的な仕組みを構築しています。DMOであっても行政からの補助金に頼らず、「自ら稼ぎ、地域に還元する」スタイルを貫く姿勢が印象的でした。

インアウトバウンド東北の西谷雷佐さんは、観光を「人生を豊かにする旅」と捉え、自らの体験をもとに商品造成・ガイド・販売までワンストップで提供。「観光が産業になっていない。『地域の価値に気づき、掛け算して売るプロデューサーが足りない』」と指摘しました。

モデレーターの永谷亜矢子さんも「観光の現場にはディレクターが不在。プレーヤーはいるのに、ストーリーを組み立てる人がいない」と共鳴。「地域資源の見せ方や価格設定において、地元目線ではなく外からの視点が必要」と説きました。

最後に登壇者らは、観光の担い手として「旅が好きで、自ら動き、地域を愛する人材」が必要であること、そしてそうした人材が安心してチャレンジできる仕組みづくりの必要性を訴えました。観光は地域の希望であり、同時に課題でもある。「観光に命を燃やせる人」が、今こそ求められています。
もはや、ここからが本番!?アフターパーティーに潜入!
すべてのトークセッションのプログラムを終えると、5階フロアはアフターパーティーの会場へと変身! 大、大、大、交流会のはじまりです。

恒例となったPOTLUCK(持ち寄り)によるお土産コーナー。やっぱり今回も人気なのは地酒!
今回のケータリングはPOTLUCK YARSUの自治体パートナーや鹿児島の食材を使用した料理。五島列島の野菜、みなべ町の梅、鹿児島のとりみそ、野菜、お肉などなど。

福井県福井市で開催される「街全体が一つのテーマパークになる音楽フェス」ONE PARK FESTIVALの主幹、オウデム株式会社が監修・キュレーションしたDJチームの心地よい音楽に酔いしれます。

同じDJでも、こちらは熱燗DJ! 温度、熟成、ペアリングなどさまざまな観点から熱燗を追求する求道者、熱燗DJつけたろうさん。今回の前割り燗は鹿児島の焼酎をこだわりのブレンド比率で事前に水で割っているそうです。

地域の宴はその後も延々と続きました……。地域で活躍する皆さん、お酒が好きな方が多いように感じるのは私だけでしょうか?
政府が地方創生2.0を掲げるなど、改めて注目されている、地域のこれから。悲観的な意見もありますが、今回お集まりいただいた地域で活躍するプレイヤーの皆さんが交わす議論を聞き、そして何より笑顔を見ていると、地域の未来は決して暗いことだけではないと思えてきます。
きっと、こうして地域と地域がつながることで、その力は何倍にもなるはず。2025年もPOTLUCK YAESUは地域と地域をつなぐハブとして、陰ながら皆さんの活動を応援させていただきたいと思います!

皆さん、また秋に会いましょう!!