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POTLUCK CARAVAN in MIYAZAKIが開催。「食」でつながった地域と人とアイデア

2023.07.21(金) 21:03
POTLUCK CARAVAN in MIYAZAKIが開催。「食」でつながった地域と人とアイデア

地域経済創発をテーマに、地域の挑戦者が集い、つながる場と機会を提供するPOTLUCK YAESU。

今回、初の試みとして、東京を出て地域で集う移動型イベント「POTLUCK CARAVAN」が行われました。開催地となったのは宮崎県です。

宮崎県内の挑戦者と宮崎県外から訪れた挑戦者が出会い、混ざり、新たな地域経済のムーブメントを生むことを目的とした2DAYS。会場には論より証拠とばかりに、宮崎県内の生産者たちの挑戦の証である食材や料理が並びました。

食べて、笑い、つながり、生み出す。これまでにない“おいしい”経済イベントの様子をダイジェストでお伝えします。

30℃を超す猛暑日となった7月6日。前夜祭が開始する夕方になっても暑さは一向に収まらず、会場に現れた参加者の皆さんは一様に汗だくです。

そんな外の熱気をそのまま会場に持ち越し、18時になると前夜祭がスタート。POTLUCK YAESUのプロデューサー上垣和と山本雄生の挨拶がはじまるも、気はそぞろ。参加者の興味は会場で調理されている料理に──。

前夜祭の会場になった「若草HUTTE」は山と街をつなぐことをコンセプトに今西正さんが運営するカフェ。店内では宮崎県産のさまざまな加工品も販売されています。

今回の前夜祭で振る舞われたのは、今西正さんが声をかけて集まった宮崎県産の逸品ともいえる食材たち。生産者をはじめとする関係者の皆さんが実際に会場に訪れ、自ら調理をしてくださいました。

生産者の方に直接お話を聞きながら実際にできあがった料理を食べる。これほどの贅沢があるでしょうか……。

宮崎県産の延岡メンマと原木椎茸の南蛮が盛り付けられたお皿を各自が持って、会場前で調理されているメインディッシュを各自がとっていくビュッフェスタイル。

放置竹林の竹を地域資源として活用するLOCALBAMBOO社の延岡メンマはANA国際線ファーストクラス機内食でも提供されている逸品。原木椎茸は若草HUTTEの運営者でもある今西猛さんの「ヒュッテきのこファーム」が提供してくださったものです。

そして、会場前で煙を上げながら食材を焼いてくださった攻撃力抜群の前線の3トップがこちら。

「やお九州」の服部学さんが焼いてくださった、宮崎県の伝統野菜の佐土原ナス。トロッとした食感と際立つ甘み、そして…でかい!
アンガスと黒毛和牛をかけ合わせた「やまちくアンクロ」というオリジナルブランド牛を提供してくださった山之口畜産の山之口祐仁さん。
天皇献上品にも選ばれた無投薬で育てた養殖ヤマメを提供してくださった、しゃくなげの森の池辺美紀さん。「でかい、甘い、うまい」の三拍子揃った「横綱コーン」を提供してくださった、どすこいファームの齊藤夫妻。

宮崎県の食材に合わせるお酒もまた宮崎県産。渡邊酒造場の麦焼酎・旭万年星に芋焼酎・夏のまんねん。香月ワインズのナチュラルワイン・PETITE PLANETEが振る舞われました。

宮崎✕宮崎のマリアージュにご飯もお酒も進み、会場は知っている人も知らない人も“みんな友だち”状態の混沌とした雰囲気に。やっぱり、おいしいは正義!あらゆる壁を壊してくれます。

そして、お腹がいっぱいになったところで、生産者の皆さんによるライトニングトークがはじまります。皆さん、自分が食べたものの背景にあった知られざるストーリーに頷きっぱなし。

お酒とともに振る舞われた平兵衛酢を生産する黒木園芸の黒木洋人さん。
デザートに「CHATEAU MANGO」を提供してくださったMAGRIの八田京子さん。元ファッションモデルという異色の経歴の持ち主。

そして、夜は更けていき、ようやく前夜祭は閉会に。本番を明日に控えているにも関わらず、皆さん一様にやり切った感のある満足げな表情。

参加者の一部は、会場にもいらっしゃった「スナック入り口」のマスター大下真史さんのアテンドで、日本一のスナック街・ニシタチへ。

本イベントを前に十分すぎるほどに親交が深まった前夜祭でした。

約70名が参加、「宮崎発の新しい地域経済」を語るトークセッション

そして夜が明けて7月7日。POTLUCK YAESUのオフィシャルパートナーでもある宮崎県新富町の地域商社、こゆ財団が主催するバスツアーに参加した後に、会場となった新富町文化会館に到着。

前夜祭のあまりの盛り上がりに「皆さん、本番前に燃え尽きて来れないのでは!?」という不安は杞憂に終わり、約70名が宮崎県内外から参加してくださいました。

「宮崎発の新しい地域経済」をテーマにしたPOTLUCK CARAVAN in MIYAZAKI、開幕です。

Session1:ダイワファームから学ぶ、酪農家の6次産業化の可能性

登壇者プロフィール

大窪 和利氏(有限会社ダイワファーム 代表)
木村 充慶氏(武蔵野デーリー 取締役 / FUKKO DESIGN 理事)

宮崎県でナチュラルチーズの製造・販売を行うダイワファームの大窪和利さんと全国の牛乳をセレクトして販売するクラフトミルクを手掛ける木村充慶さん。この日最初のセッションは牛乳対談に。

ダイワファームの大窪 和利氏

現在、日本の酪農はさまざまな課題を抱えています。消費者の牛乳離れのほか、後継者問題、牛のげっぷがメタンガスを排出するという気候変動問題、ウクライナ危機に端を発する穀物や燃料の高騰、そしてコロナ禍で学校が休校したことによる消費の落ち込みなど。中央酪農会議の調査によれば85%の酪農家が赤字に陥っているそうです。

また、日本の酪農は大量生産大量消費を前提とした制度が確立しており、各酪農家が出荷した牛乳の多くはブレンドされて定められた価格で販売されるのが一般的なのだとか。ごちゃまぜになるのであれば、美味しい牛乳をつくるモチベーションも湧かなくなってしまいます。

武蔵野デーリーの木村 慶充氏

そんな現状を高付加価値化で打破しようというのが、木村さんのクラフトミルクであり、大窪さんの6次産業化の取り組み。大窪さんは牛乳の生産調整の指示を受けた際に、雑誌で読んだチーズの作り方を真似てみたことがきっかけで6次産業化の取り組みを開始。3年の歳月をかけてチーズを完成させ、以来チーズの道を突き詰めていったそうです。

最初は周囲から白い目で見られたという大窪さん。6次産業化は法律で禁じられているわけではないにも関わらず、その一歩を踏み出しにくい現状があるそうです。トークセッション内では、酪農家を後押しする存在の重要性や酪農家自身の信念の重要性について語られました。

Session2:宮崎発グローバル!! 地域発の食文化を世界に届ける

登壇者プロフィール

村岡 浩司氏 (株式会社一平ホールディングス 代表取締役)
早川 薫氏(早川しょうゆみそ株式会社 取締役専務 7代目予定)
工藤 拓真(株式会社BRANDFARM代表取締役社長 / 株式会社dof執行役員 / 株式会社YAMAP社外取締役)

BRANDFARMの工藤拓真氏

こちらのセッションでは、BRANDFARMの工藤拓真さんがモデレーターとなり、宮崎発で海外での事業展開を行う一平ホールディングスの村岡浩司さんと早川しょうゆみその早川薫さんと、地域企業のグローバル展開の可能性について語られました。

一平ホールディングスの村岡浩司氏

九州の素材で作った「九州パンケーキ」を、台湾やシンガポールなどの海外で事業展開する村岡さん。原体験にあったのは過去に訪れたシンガポール。国内ではなく海外に向けて事業を行うのが一般的になっているシンガポールの状況を目の当たりにしたことが、当時の村岡さんに大きな影響を与えたのだとか。

一方、創業138年の早川しょうゆみその跡継ぎとなる早川さんは、アメリカに留学していた経験から、常に海外展開を視野に入れていたそうです。現在はヨーロッパに積極的に事業展開し、エリザベス女王即位70周年を記念したアートブックのオフィシャルパートナーとして選出されるなど高い評価を得ています。

セッションの中で村岡さんは「宮崎にとっては、日本の他の地域も海外も、どちらもグローバルだ」と語りました。それであれば、地域の企業がグローバルに展開することがもっと一般的になっても良いのかもしれません。

村岡さんは、宮崎という単位ではなく、「ONE KYUSYU」を標榜して九州全体の地域活性化をしながら、その連携を力にして、海外で勝負しています。

早川しょうゆみその早川薫氏

早川さんはワインと同じように味噌にも地域性がある点に着目して、ヨーロッパで勝負することを選択。これまで紡いできた138年の歴史や職人の技術など、丁寧にストーリーを伝えることで現地でのブランディングに成功しています。

二人のような成功事例が広まっていくことで、今後地域からグローバルへの流れが加速していくかもしれません。

Session3:地域は挑戦する人材をいかに生み出すのか

登壇者プロフィール

永山 英也氏(宮崎市 副市長)
齋藤 潤一氏(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構代表理事 / AGRIST株式会社 代表取締役)

次のセッションのテーマは「挑戦」です。宮崎市の副市長として行政サイドで地域の挑戦を後押しする永山さん。宮崎県新富町の地域商社「こゆ財団」の代表理事として新富町を「世界一挑戦しやすい街」にすることを掲げる齋藤さん。まさに宮崎という地域の挑戦する文化、そして可能性を語るにふさわしいセッションになりました。

こゆ財団の齋藤潤一氏

地域はどのようにして挑戦のカルチャー・エコシステムを獲得するのか? この問いに対して、齋藤さんは「心理的安全性」をキーワードに挙げました。今、多くの地域や企業で語られるオープンイノベーション。しかし、心理的安全性のないオープンイノベーションは言葉だけのものになってしまうと指摘します。

永山さんは宮崎でも地域や社会のためにアクションを起こす挑戦者が増えているという印象を語りつつ、「人と人が出会う場所が少ない」「宮崎県内のレガシー企業を巻き込めていない」という2つの課題を挙げます。

宮崎市副市長の永山英也氏

「人と人が出会う場所が少ない」という課題に対して、挑戦を下支えするエコシステムを生み出すために、これからのまちづくりはビルを建てるだけでなく、人との出会いまで設計すべきだと語る永山氏さん。これに対して齋藤さんは「エコシステムはエコヒイキ」と、志のある挑戦者をフックアップする重要性を指摘し、永山氏もこれに同調しました。

また、「宮崎の地場のレガシー企業を巻き込めていない」という課題に対して、永山さんは「地場の企業にもまず楽しさを感じてもらうことが大切だ」と語り、県内の面白い人材が集めてマッチングするシステムを宮崎市として構築し、宮崎県全体を巻き込んだオープンイノベーションを実現したいと、意欲を示しました。

齋藤さんは最後に改めて心理的安全性のあるオープンな場づくりの重要性を強調。地域の「挑戦」に関する本質的な議論が行われた有意義なセッションとなりました。

Session4:【大放談】林業の6次産業化の現在地 Collaboration by ちょうどいい材木ラジオ

登壇者プロフィール

井上 達哉氏(VUILD株式会社 COO)
山川 知則氏(VUILD株式会社 プロジェクトデザイナー / namitokaze代表)

デジタルテクノロジーで建築産業の変革を目指すVUILDの井上さんと山川さん。お二人のラジオ番組「ちょうどいい材木ラジオ」の公開収録として、最後のセッションが行われました。

左からVUILDの井上達哉氏、山川知則氏

スギの生産量が30年連続で日本一になるなど、実は有数の林業県でもある宮崎県。林業の6次産業化というテーマをお二人に投げかけると、まず返ってきたのは知られざる林業の実態でした。

林業の6次産業化というと、間伐材を利用したオシャレな雑貨・家具ブランドなどを想起する方も多いかと思います。農業や酪農などと林業がまったく異なる点。それは時間軸が圧倒的に長いということです。

植樹してから木材として利用できるまでにかかる年月は50年から100年というスパン。50年以上、森を管理するコストを誰が負担して、どう回収するのか。森を木材にした後、誰が森に再投資するのか。現状、多くは補助金で賄われており、マーケティングやブランディングだけでは解決できない、さまざまな課題が存在します。

VUILDのお二人は、理屈や理論ではない森や林業への強い想いを持っている人たちが、森を支えていると語ります。そして林業やその6次産業化に興味を持った人たちには、まず森に連れていき、そこに携わる人たちの想いを感じてもらうようにしているそうです。

また、お二人は林業の6次産業化の例として、宮崎県椎葉村の保育園の遊具を地元の木材で制作した取り組みを挙げました。児童数も少なく予算もないけれど、子どもたちに良質な木のおもちゃで遊ばせてあげたい。そんな想いをもった保育士さんがいたからこそ実現したそうです。

森は大地の恵みであり、先人たちが残してくれている大切な資産。だからこそ、林業の6次産業化に携わろうとする人たちは、その想いをきちんと受け継いでいくべきなのかもしれません。

食が生み出したイベントの一体感。今後は全国へ。

初の試みとなったPOTLUCK CARAVAN。宮崎県内外問わず、企業、行政、そして挑戦しようとしている人、その挑戦を応援しようとしている人。さまざまなセクターの人々が集い、語り合う1日となりました。

一つひとつの会話を収録することはできませんが、トークセッションの外でも、宮崎県、そして地域の未来について参加者同士でさまざまな会話が交わされていました。

そしてその中心にあったのは“おいしい”食事。この日もご登壇いただいた皆さまから一平ホールディングスの一平寿司と九州パンケーキ、ダイワファームのモッツァレラチーズ、早川しょうゆみそのMISOパウダーなどの、さまざまな食材をご提供いただき、宮崎県の挑戦をトークだけでなく、実際に食という形で体験できるイベントになりました。

一平ホールディングスの九州パンケーキ
ダイワファームのモッツァレラチーズ
早川しょうゆみそが開発したMISOパウダー

POTLUCK CARAVAN in MIYAZAKIの発案者でもある、こゆ財団の齋藤潤一さんは次のようにイベントを振り返ります。

「全国各地から多くの人が集まり、宮崎の生産者の皆さんも本気で食材や料理を提供してくれました。そのおかげで、みんながワンチームになれたし、心理的安全性が生まれたのだと思います。僕はかねてから言っているのですが、その地域の特徴は食に現れます。POTLUCK CARAVANが今後続いていくのであれば、いろんな地域で食に出会える旅にするのも面白いですね」(齋藤さん)

POTLUCK YAESUのプロデューサー上垣和と山本雄生も、初の試みだったPOTLUCK CARAVANに手応えを感じたようです。

「いつもは東京ミッドタウン八重洲を拠点に活動しているPOTLUCK YAESUですが、実際に地域側に来てみて、この一体感は地域でしか得られないものだと感じました。今後、POTLUCK CARAVANで各地を回っていく際に、この宮崎で出会った人たちにもご参加いただくことで、どんどん地域間のつながりが深まっていくと良いですね」(上垣)

「今回のPOTUCK CARAVANには全国から多くの方にお越しいただきました。POTLUCK YAESUのプロジェクトが開始して約3ヵ月、少しずつ蓄積できていると感じられ、素直に嬉しいですね。また、今回は宮崎県内の多くの皆さんにもご参加いただきました。同じ宮崎県でも実は知らなかった人やことがあったそうで、そこのつながりが生まれたことも今回の成果として感じています。今回のイベントで得た経験と学びを次のPOTLUCK CARAVANにも活かしていきたいです」(山本)

盛況のうちに終わったPOTLUCK CARAVAN in Miyazaki。次はあなたの街にお邪魔させていただくかもしれません。今後のPOTLUCK YAESUプロジェクトにぜひご注目ください!