三井不動産

【POTLUCK CARAVAN】世界三大毛織物産地「尾州」を巡る産業観光へ、新幹線でGO!

2023.11.29(水) 16:09
【POTLUCK CARAVAN】世界三大毛織物産地「尾州」を巡る産業観光へ、新幹線でGO!

移動型イベント「POTLUCK CARAVAN」の第三弾となる今回は、ひつじサミット尾州とのコラボレーションにより、同イベントの前夜祭として世界三大毛織物産地「尾州(愛知県一宮市〜岐阜羽島市)」での開催となりました。

ひつじサミット尾州は、『着れる、食べる、楽しめる!ひつじと紡ぐサスティナブルエンターテイメント』をテーマにした産業観光イベント。尾州の事業者が多数参加して、普段は見ることのできない毛織物の作業工程などを見学することができます。

そして、ひつじサミット尾州のテーマが産業観光ならば!ということで、「POTLUCK CARAVAN」として今回初めてチャレンジしたのが……、

POTLUCK Train!!

POTLUCK YAESUの最寄り駅の東京駅からイベント会場の最寄り駅の岐阜羽島駅まで、新幹線の車両を貸し切りにして、トークセッションを開催してしまおう、という試みです。

移動型イベントというより、移動しながらイベントになってしまいました。

さてさて、どうなったのでしょうか? POTLUCK Trainから尾州へのイベントまで、1日の様子を紹介します。

POTLUCK YAESUに集合して、東京駅から出発

午前10時、POTLUCK Trainの参加者の集合場所は東京ミッドタウン八重洲5FのPOTLUCK YAESUです。

これから列車の旅、そして尾州のイベントを共にするメンバーが続々と集まってきます。

POTLUCK Trainでご登壇いただく登壇者の方たち及び参加者全員の自己紹介タイムです。

いつもはこういった時間は延長してしまいがちですが、今日に限っては時間厳守! なぜなら新幹線に乗り遅れてしまいますので……。

各自東京駅構内でお弁当を買って、改札に集合! 

皆さん、東京発岐阜羽島行、POTLUCK Trainの乗り場はこちらでございます〜。

新幹線に乗り込むと……

車内のいたるところがPOTLUCK仕様!これはテンションが上がってしまいます。

そして電車は動き出し、いざ尾州へ。

車内の雰囲気はさながら大人の修学旅行。まずはお弁当タイムです。なかにはアルコールの缶をプシュッと開けている方も。新幹線に乗ると呑みたくなる気持ち……、わかります。

しかし、うかうかしていると、新幹線が岐阜羽島へ着いてしまいます。

さあ、そろそろPOTLUCK Trainのトークセッションをはじめましょうか!

【POTLUCK Train1】オープンファクトリーはどう楽しむべきか?

車内で最初に開催したのは、ひつじサミット尾州の予習的プログラム。オープンファクトリーの楽しみ方や尾州の毛織物産業の魅力について語られました。

繊維産地をめぐり情報発信をしている宮浦晋哉さん。オープンファクトリーの見どころについて次のように語ります。

「早い人は10代で職人になって、毎日当たり前のように職人としての作業をこなしている。彼らにとっては当たり前のことが、すさまじい技術で気の遠くなるような作業だったりします。そのギャップを楽しんでほしいですね」

平澤良樹さんは以前ひつじサミット尾州に参加したときに「職人がものに向き合う背中がかっこいい」と感じたのがきっかけで、同イベントを運営する三星毛糸でインターンをはじめたそうです。

入社して実際に現場で感じたのは、素材や湿度によって昨日できたことが今日できない、そんな答えのないものづくりの楽しさなのだとか。

尾州は誰もが知る世界的な高級ブランドとも取引のある産地。しかし、日本人の中にはその事実を知らない人が少なからずいます。世界三大毛織物産地として、すべての工程が集積しているからこそ、オープンファクトリーではすべて見ることができる。そんな機会は滅多にないとのこと。

ひつじサミット尾州への期待感が高まるセッションになりました!

【POTLUCK Train2】車両で語る、この地域の3年後が面白い。

「この地域の3年後が面白い」のお題に対して、永谷亜矢子さんが挙げたのが北海道の十勝。食料自給率1位の北海道のなかでも、十勝の自給率はなんと1,000%越え。

永谷さんは43ヘクタールほどの広さのとうもろこし畑を所有しており、朝イチに畑にいってもぎらずにその場で齧りつくという食べ方をおすすめしているそうです。その食べ方が一番糖度が高く、とても甘いのだとか。

永谷さんは続けて、最近人気のエリアとして青森を挙げました。青森といえば、ねぶた祭り。200万人が来場するねぶた祭りですが、それまでは3500円のパイプ椅子の席しかなく、地域にお金が落ちていなかったそうです。そこで永谷さんはオマツリジャパンと共に100万円の桟敷席を用意。ニュースにも取り上げられ、黒字化したそうです。

川原卓巳さんは永谷さんの話を受けて、米国に住んでいた際に日本が好きな富裕層と接していた経験から、次のように話しました。

「日本を好きな外国人は主な観光地にはすでに行ってしまっていて、より強く日本を感じられる場所を探しています。青森もそうだけれど、これまで観光客を受け入れていないからこそ残っている日本らしさだったり、その土地の旬のものだったりがあります。そう考えると、日本全国可能性しかないですよね。

ただ、日本が好きでお金を使いたいのに、お金を落とす場所がないと言われるんです。泊まりたいような宿がなかったりとか、それが今の現状。日本のそういう土地にビジネスを成立させたい。それが今の僕の思いです」

飛騨で林業の会社の経営に携わっていた林千晶さんは、ビジネスとして成立させるのが難しいと言われる林業で、今年ようやく黒字化を達成できる見込みなのだそうです。川原さんの話を受けて「日本のどこでも、やる気がある人がいたら、その地域をもう1度復活させることは可能だと思う」と語りました。

セッションの話題が日本の地域課題の深い部分まで切り込んだタイミングで、新幹線は名古屋を過ぎてもうすぐ目的の岐阜羽島へ──。

続きは現地イベントでのお楽しみ、と相成りました。

POTLUCK CARAVAN in尾州、スタート!!

イベントの会場になったのは岐阜羽島駅からタクシーで15分ほどの場所にある三星毛糸株式会社本社内にある会員制コワーキングスペース「タキビコキャンバス」。スノーピークのアウトドア用品が配置されたお洒落な空間と、目の前には焚き火ができる庭も併設。

住宅街の真ん中に、こんな洗練された空間があるなんて……驚きです。

ここからは直接会場にお越しいただいていた参加者の皆さんと合流。いよいよ、POTLUCK CARAVAN in尾州の開幕です!

【Session1】地域をプロデュースしよう!

オープニングは三星グループ代表の岩田真吾さんがモデレーターになり、「地域をプロデュースしよう!」というテーマで地域のプロデュースを手掛ける川原卓巳さんと永谷亜矢子さんにお話をいただきます。POTLUCK Trainに参加してメンバーにとっては先ほどまで開催していたセッションの延長戦です。

プロデューサーとは収支まで見ながらプロジェクトをリードできる存在。川原さんが新幹線での議論に引き続き「(地域に)本質的な価値はすでにある。ただ、それがビジネスとして存在できていない」と語ると、岩田さんも「地域活性化で花火を打ち上げたものの、それが地域経済に本当に寄与しているのか、誰が責任を取るのかわからない場合がある」と応じます。

永谷さんは自身がプロデュースした事例として、山梨県富士吉田市での取り組みを紹介しました。機織りの町である富士吉田で、FUJI TEXTILE WEEKという布の芸術祭を開催。産業マッチングのほか。アーティストと機屋がコラボレーションした作品を空き家に展示することで空き家の利活用にも取り組んでいます。また、富士吉田の歴史と文化を海外に知ってもらうことで富士山の写真を撮影するだけの素通り観光からのビヘイビアチェンジを目論んでいるそうです。

地域プロデュースの極意について「『正しい』は広がらない。やっぱり『楽しい』なんですよね」と語る川原さん。そしてそのプロデュースの過程は「『行き当たりばったり』のなかでなんとかする、『行き当たりばっちり』」なのだそうです。

川原さんの話を受けて、永谷さんは「楽しい」を作るための3つの消費について語りました。

「モノ消費・コト消費はもう古いです。1つはトキ消費。これはその時にしか体験できないことです。ひつじサミットもそうだし、旬のホタルイカもそう。2つ目はエモ消費で、幸せな共感に皆お金を使うようになっている。3つ目がイミ消費で、これはSDGsなどの社会貢献につながることです」

川原さんはこの3つの消費をつくるためには五感の設計が重要であるとし、「視覚」「聴覚」だけでなく、現地に行かないと得られない「味覚」「触覚」「嗅覚」を設計することが地域プロデュースには不可欠だと語ります。

現役トップレベルのプロデューサーによる金言が余すことなく語られる、貴重なセッションとなりました!

【Session2】産業✕観光の可能性

「産業✕観光」をテーマにした本セッション。シニア向けに宿泊予約事業を手掛ける徳田さんは、旅行業界のトレンドについて次のように語りました。

「インバウンド客も最初は東京や京都に行きます。でも、それ以降になるともっと日本の新しい一面も見てみたいと考えて調べ始めるんです。

お仕着せの観光ではなく、オリジナルの体験をしたい。そこを突き詰めると、人に行き着くんです。

そしてさらに地元の人たちのどんな営みをしている?と考えると、今日のテーマである『産業』があります。産業はその土地の人々を形成してきたアイデンティティでもありますから」

矢島さんが来春に京都の与謝野町で開始予定の宿泊事業は、まさに徳田さんが話したニーズに応える事業です。

京都駅から1時間半ほどかかる与謝野町は西陣織の元となった丹後ちりめんの産地。海外の高級ブランドに勤務する方たちが来訪するにもかかわらず、1泊1万円ほどの安価な宿しかなく、皆京都へ1時間半かけて戻って宿泊してしまうのだとか。

「私が初めて与謝野町に訪問したときに、普通に住民の方が『ようこそ、私たちの町へ』と言ってくださったんです。すごいですよね。

伝統産業もあるし、自然も豊かで、京都市街のように人混みになっているわけでもありません。

地元の産業の邪魔をせず、新しい市場を開拓できれば、大きな価値があります。最近ではリジェネラティブツーリズムと呼ぶそうですね」

また、ひつじサミット尾州のクリエイティブディレクターとして実際に産業観光を推進してきた淺野さんは、これまでの取り組みが実を結び始めている手応えを感じているそうです。

「やっぱり体験してみると全然違うんですよ。細かな作業や裏側にある苦労など、そういったことがクチコミにもつながって多くの方に知っていただくきっかけになったのだと思います。さらには知っていただくところから産地を越えたコラボレーションも生まれるようになってきました。何かが起こりそうな予感がしています」

「産業✕観光」に可能性があるのは、ひつじサミット尾州の前夜祭となる本イベントに多くの方が参加しているのが何よりの証左。今後もひつじサミット含め、全国の産地の動向に注目です。

【Session3】地域コミュニティがDXを進める

地域の企業、特に中小企業ではまだDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいない企業が多くあります。尾州エリアでは、経済産業省の地域DX推進環境整備事業として2023年4月から尾州繊維産業DX推進コミュニティを発足。三星毛糸株式会社など尾州エリア7社が参画しています。

アナログな手法を変えることができない企業がどのようにDXを推進していくのか。平塚さんは「昭和脳から令和脳へ」変えていくことが大切だと話します。

「今、日本の小中学生はギガスクール構想で、1人1台の端末を持って授業を受けています。その子どもたちが大人になって皆さんの会社に入社するときには、Googleを文房具のように使うようになっているわけです。私たちの昭和脳に新しいOSをインストールしないといけません。令和脳をインストールしていただかないと、もう間に合わないんです」

DX推進コミュニティに参画する国島株式会社では、まずは出退勤のシステム化や社内の情報共有の一元管理などに取り組んでいるそう。しかし、簡単には進まないと担当の森さんは話します。

「社員全員、課題はわかっているんですよね。ただこれまでずっとやってきたやり方があるから、今さらみたいな温度感はあって。だからなるべく言葉で伝えるのではなく、見える化させて、どういったメリットが生まれるのかを提示して、少しずつ進めている状態ですね」

中部経済産業局の磯貝さんは現状への危機感とDXへの期待感について次のように話しました。

「この20年で機屋さんがどんどんなくなっている状況を聞いています。世界3大毛織物産地と言われる尾州であり続けるためにも、DXはもう待ったなしでやらなくてはいけません。DXで小さな成功体験を積んでいくことで、ずっと強い尾州を維持するために必要なのだと思います」

【Session4】尾州から学ぶ「採用に繋がるオープンファクトリー」

ひつじサミット尾州に参画する繊維事業者の皆さんによる本セッション。テーマは「採用に繋がるオープンファクトリー」です。

各地の地場産業と同じく、世界三大毛織物産地と言われる尾州の繊維事業者でも担い手不足が慢性化しているとのこと。伴染工株式会社の伴さんは、「職人はもちろん、オペレーターなども含めて人手不足」だと話します。

三星毛糸の今野さんはハローワークなどに求人票を出すなどの基本的な採用活動は行いつつ、最近は複業人材の採用を開始したと語ります。しかし、やはり採用できる職種には偏りが生まれるなど、採用には課題を感じているとのこと。

実は本セッションに登壇した伴染工の大須田さんと三星毛糸の上川さんは、ひつじサミット尾州がきっかけで各社に入社した人材。

大須田さんは同社の専務である伴さんと知り合いだったころからひつじサミット尾州に家族と訪れ、そこで工場見学をするなかで「面白いかもしれない」と感じたそうです。京都で手織りの勉強していた上川さんも、ひつじサミット尾州がきっかけで、京都で就職を検討していたにも関わらず、尾州での就職を考え始めたそうです。

ファシリテーターの小口氏は、愛知県一宮市・津島市、岐阜県羽島市と自治体の枠を越え、40社が連携して“面”でPRしていることが雇用の機会を生んだのではないかと見解を述べました。

では、産地で協力して人手不足を解消していくという取り組みは全国で横展開可能なのでしょうか。

伴さんは「そもそもどんな職種があるのかを求職者が知らないケースもある。地域を超えることで人が動いてくれたら」と語ります。

事業では競合することもある各社。しかし、協調すべき領域は協調することで産地全体の活性化につながり、結果的に個社の活性化にもつながっているようです。

【Session5】都市と地方の素敵な関係

最後を飾るセッションのテーマは「都市と地方の素敵な関係」。

林さんは「地方の事業は都市を抜きに語ることができない。でも、これからは都市も地方抜きで語ることができなくなる」と語ります。それはなぜでしょう?

「東京は自然の地の利を活かせていません。でも自然と関係なく生きていると、やっぱりそういうものの手触りを求めるようになる。それで今都市から地方へ行く人が増えているというのが私の感覚です」

林さんが飛騨で林業に取り組むことになったのは、「遊びでいいから1度来てください」と言われたのがきっかけ。家族を連れて訪れた際に2月の寒い時期にも関わらず用意していただいたお茶が温かったのだそうです。ぎりぎりまでお茶を温めてくれた心遣いを感じて、忙しくて断ろうと思っていた飛騨での事業を始めたのだとか。

これを受けて岩田さんは「経済合理性で林さんのような人は呼べない。でもエモい価値でなら動く」と応じ、「地域にとって林さんや齋藤さんのような外部の人に来てもらえたのはとても大きいこと」と語りました。

宮崎県の児湯郡で地域商社・こゆ財団を運営する齋藤さんは、一方でAGRISTというアグリテックのスタートアップも経営しています。齋藤氏はAGRISTを創業した理由について「スタートアップが産業を作っていかないと地域が良くならないと思った」と語ります。

まったく違う時間軸の2つの経営に携わる齋藤さんは悩みながらも次のような結論に至ったそうです。

「行政だろうとスタートアップだろうと結局は一緒。僕からすると都市なのか地方なのかも関係ない。海外から見たら日本のどこにいようとジャパンなわけです」

林さんは「人間の体には動脈と静脈どっちが多いと思う?」と問いかけました。

「同じなの。でも、動脈と答える人が多い。私はこれまで動脈で生きてきたけど、これから静脈を大切に生きていたいなと思っています。

ものをつくって買われていくとどこかで回収されているわけじゃない?飛騨で林業をやっていても、木が育って、それで私たちが生活して、使わなくなったらバイオマスにというような循環がある。

動脈と静脈が合わさって初めて1つのビジネスになると思っているし、都市と地方も巡り巡ることが必要だと思っているの」

齋藤氏はこれに同調して「さらに加えると『混ぜる』がキーワードだと思っています。混ぜるとまた新しいアイデンティティが生まれる。それを繰り返して、弁証法のように時代は流れていくのだと思います」と話しました。

二項対立で語られることの多い都市と地方。その2つが合わさり、混ざりあうことが日本全体を活性化につながっていくのかもしれません。

POTLUCK CARAVAN in尾州はすべてのセッションを終え、参加者は庭へ移動してバーベキューを楽しみました。気づけばもう夕暮れ。焚き火を囲みながら親交を深めました。

POTLUCK Trainは今回始めての取り組みになりましたが、参加者の皆さんからは「楽しい」「画期的」「修学旅行みたい」と好評いただいていたご様子。もしかしたら、今後、新幹線が通っているあなたの地域にもお邪魔するかも!? 是非これからもPOTLUCK CARAVANおよびPOTLUCK YAESUの動向にご注目ください!!

なお、ひつじサミット尾州は2024年10月25日(金)〜27日(日)に開催することが決定しているそうです。皆さん、今からカレンダーに入れておきましょう!

https://hitsuji.fun