北海道・十勝にサウナ市場を生み出した「博多の明太子ブランド理論」
北海道の南東部に位置する帯広市を含む19市町村の広域行政区、「十勝」。その十勝が今、フィンランド式サウナを楽しめる「サウナ王国」として、全国のサウナ愛好者の間で注目を集めている。
帯広市内の「森のスパリゾート 北海道ホテル」がフィンランド式サウナを導入したのを皮切りに、フィンランド式サウナを十勝のさまざまな宿泊・観光施設が導入。サウナ観光が生み出す経済効果は観光業を中心に十勝の経済全体へ波及しつつある。
なぜ、十勝はサウナによる地域活性化に成功したのか。関係者への取材から紐解いていく。
氷点下の気温、積雪……北海道の冬場は閑散期
広大な土地と豊かな自然の恵み。さまざまな観光資源を有する十勝だが、その地域特性ゆえの課題がある。
札幌から帯広までの距離は約195km。高速道路を使っても約3時間の距離だ。北海道は広大であるがゆえに、観光業における商圏も道内で分断され、地域ごとに“観光格差”が存在する。
北海道経済部観光局の調査では、2019年の宿泊者数が札幌・小樽を含む道央圏で年間93万3千人であったのに対して、十勝圏の宿泊数は年間5万5千人だ。
もう1つの課題が寒冷地であること。夏場は避暑地として景色やアクティビティが楽しめる一方で、冬場は積雪と氷点下になる気温で観光客数は減少する。これは十勝に限らず、ニセコなどのスキー場がある地域を除いた、北海道全域に共通する課題だ。
帯広空港から車で約30分。帯広市内の老舗ホテルである「森のスパリゾート 北海道ホテル」も冬場の客室稼働率に課題を抱えていた。
「夏場はホテルの客室稼働率が80%から90%はいくんですけど、冬場は圧倒的に落ち込んで50%ぐらいになっていました。冬場の落ち込みが影響して、年間の稼働率は65%程度に。冬場にどうやって集客していくかは、長年の課題でした」(北海道ホテル 取締役社長 林克彦氏)
林克彦氏が代表を務める北海道ホテルは地元新聞社・十勝毎日新聞社のグループ企業。兄・浩史氏が十勝毎日新聞社の代表を務め、克彦氏は2017年に北海道ホテルの社長に就任した。
克彦氏自身も十勝毎日新聞社で記者をしていた時期があり、道内外で経営者との交流もあったことから、経営に関しては柔軟な発想を持っていた。
そんな林氏が十勝におけるサウナブームの火付け役となるわけだが、当初、林氏はサウナにネガティブな印象を持っていたという。
「私はね、サウナが嫌いだったんですよ。サウナに入って水風呂に入って気持ち良いって、理屈としてよくわからなかった。2018年7月にサウナのプロデュースなどを手掛けるととのえ親方とお会いする機会があったのですが、『もう二度と会うことはありません』と、正直に親方に伝えちゃったぐらいで(笑)」(林氏)
フィンランドで感じたサウナ観光の可能性
そんな林氏が心変わりするきっかけがあった。ある日、台湾の大金持ちがサウナ目的で十勝に訪問し、立て続けに嫌いだったサウナというキーワードが続いた。
なぜわざわざサウナに?と、不思議に思った林氏は北海道ホテルにあったドライサウナが付いている部屋に自ら試泊。それをSNSにアップしたところ、ととのえ親方が反応した。
そして後日、ととのえ親方に北海道ホテルに宿泊してもらい、親方から正しいサウナの入り方を教わることに。結果、林氏は徐々にサウナにハマっていった。
「当時私は半分鬱に近い状態だったと思うんですが、サウナに入るようになって風邪をひかなくなったし、熟睡もできるようになった。本当に体調が良くなったんです。でも本当にサウナにハマったのはフィンランドに行ってからですかね」(林氏)
2019年4月、林氏は「サウナの聖地」であるフィンランドに視察に訪れる。フィンランドはサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」の発祥の地。
ウィンターリゾートの地であり、サウナ観光にも力を入れるフィンランドのルカでのさまざまな体験を通じて、林氏はある発見をする。
「ルカでは毎日5ヵ所ほどのサウナを巡りました。そこではウェルカムドリンクがあったり、サウナを巡るためのスタンプラリーがあったりと、サウナがしっかりと観光ツアーになっているのを体験したんです。そこで本当にサウナが好きになりました。
サウナで体を温めてから、凍った池にあけた穴に入ってクールダウンするアヴァントという入浴法も体験しましたよ。
フィンランドと十勝はすごく似ているんですよね。景観もそっくりだし、気候も近い。食べ物もチーズなどの乳製品やサーモン。
それでサウナのスタッフに繁忙期がいつか聞いたら、11月から4月だと言うんです。寒い時期の方がサウナは盛り上がると。これ、十勝の冬場の課題にばっちりはまるんじゃないかと思ったんです」(林氏)
帰国後、林氏はすぐにととのえ親方からのサポートを受けながら、北海道ホテルのサウナをロウリュのできるフィンランド式に改装した。
改装にかかった費用は男女用各100万円の200万円程度。林氏は最小限の投資から自らの北海道ホテルで実証実験的にその効果を図ろうとした。
当時はサウナと水風呂を交互に入る交換浴で「ととのう」という文化がサブカルチャー的に日本で広まりはじめていた時期
そして北海道ホテルがロウリュを導入するのとほぼ同じ時期にテレビ東京で「サ道」がドラマ化した。ここからサウナ文化は加速度的に普及していくことになる。
「北海道に本格的なフィンランド式サウナを楽しめるホテルがある」
その評判はサウナ愛好者の間でまたたく間に広がり、北海道ホテルにはサウナ愛好者たちが全国から集まるように。また日帰り入浴客数はロウリュの導入前後(2018年・2020年)を比較すると年間売上582%、年間入客396%となった。
「博多の明太子ブランド理論」が市場を生み出す
閑散期だった冬場に全国からサウナ愛好者がやって来た。この時点でホテルの施策としては十分な成果をあげている。
しかし、とかち帯広ホテル旅館組合長や帯広観光コンベンション協会副会長も務めていた林氏はここから自社だけでなく十勝エリアの広域でサウナを普及させていくことを目論んだ。
「僕が勝手に『博多の明太子ブランド理論』と名付けている考え方があるんです。明太子はふくやさんが考案して大ヒットしました。その後、地元の事業者が売りたいから卸して欲しいと言ってきたそうなのですが、ふくやさんはこれを断るんですよ。製造方法を公開するから自分なりの味付けで作りなさい、と。
明太子に使っている鱈は北海道の魚ですし、明太子は博多でしか作れないものではない。ここまで博多の明太子ブランドが浸透したのは、多くの製造業者が自分たちなりの明太子を作ったことで、市場が生まれたからだと思うんですよね。
そこで、僕が北海道ホテルで成功したデータとノウハウを全部教えて、フィンランド式サウナに投資してくれるように十勝のホテルや旅館に呼びかけたんです。すでにドライサウナがある浴場であれば男女用合わせて200~300万円でロウリュを導入できます。
競合が増えるという考え方もできるかもしれません。でも、市場が盛り上がれば、きっと“元祖”と呼ばれる場所には、ずっとお客さんが来てくださると思うんですよ。北海道ホテルとしてもメリットは必ずあるはずです」(林氏)
林氏には、過去に「博多の明太子ブランド理論」につながる成功体験があった。まだ北海道ホテルの社長就任前、同じ十勝毎日新聞グループの「千年の森」という十勝・清水町にある観光施設の社長をしていた。
2009年に肝いりでガーデンをつくり、グランドオープンするも結果はふるわず。周囲に他に施設もないような場所で単独で集客することの限界を感じていた。
そこで近接する地域で最大のブランドであった「北の国から」で有名な富良野にあやかることに。広域連携により旭川空港と帯広空港を挟んだ2泊3日の観光ルートをつくり、北海道ガーデン街道と名付けてプロモーションした。
これが大当たりして、十勝のガーデンの利用者は3年のうちに15万人から35万人まで増えたのだ。十勝における夏場の集客には一定の成果を出すことができた。ならば、今度はサウナの十勝が一体となり民間連携で冬場の集客を──と林氏が考えたのだ。
十勝サウナ協議会で「点」から「面」へ
十勝には約50人が所属するますらお会という名の若手リーダーの会がある。林氏が幹事役になり、年末に酒宴を開いて情報交換をしながら親睦を深めている。
林氏はまだロウリュを導入する前の2018年末に、一度この会合にととのえ親方を招きドライサウナでサウナ会を開催している。
また親交の深い知人には個別でもサウナの布教活動をしていたという。十勝で4つのホテル、札幌で1つのホテルを運営するホテル十勝屋の取締役社長の後藤陽介氏もその一人だ。
「(林)克彦さんがととのえ親方にサウナにハメられて、その1週間後くらいに『陽介、ちょっと北海道ホテルに来い。おまえ、サウナの正しい入り方知っているのか』と呼ばれました。当時、まだ今ほどサウナもブームになっていなかったので、ちょっと何を言っているのかという感じだったのですが(笑)。
それで正しいサウナの入り方を教わったら、今までのサウナとはまったく違う体験でした。その半年後くらいですかね。克彦さんがますらお会で皆をサウナにハメるぞ、と。そこで若手経営者がどんどんサウナにハマっていったのが、十勝でサウナが盛り上がる1つの要因になったのだと思います」(後藤氏)
その後、前述のように林氏は北海道ホテルでロウリュを導入し、数字でフィンランド式サウナの導入効果を示した。
「陽介のところもやりなよ」という林氏の呼びかけに対し、後藤氏は札幌の運営ホテルで、こっそりとロウリュを導入。入浴者数は倍々で増えていった。その実績と基に、旗艦店である十勝ガーデンズホテルにもロウリュを導入した。
元々稼働率は年間を通して高かったという十勝ガーデンズホテルだったが、サウナ客を中心に顧客満足度が上がったほか、日帰り入浴客も2倍になったという。
そして、「点ではなく面でサウナをプロモーションしていきたい」という林氏の構想に賛同した後藤氏は、林氏が発起人となり2020年4月に発足した十勝サウナ協議会の会長に就任した。
「発起人の克彦さんから『はい、じゃあ会長は陽介ね』と(笑)。もちろん好きでやっている部分もあるんですけれど」(後藤氏)
十勝「サ国」プロジェクトと銘打つ十勝サウナ協議会では、加盟している施設を安く周遊できるサウナパスポートを発行。すでにサウナ愛好家の間で有名になっていた北海道ホテルを起点に、ほかの近隣サウナ施設にもお客さんが流れるような仕組みを作った。
さらに十勝サウナ協議会への加盟にあたっては10個の規定を設けた。ロウリュができること、水風呂は循環式の塩素が入っているものはNG、サウナ室内にテレビや時計は置かない、十勝原産の材料を使用するなど。
これは十勝をフィンランド式サウナの聖地としてブランディングするための質を担保する基準であり、「博多の明太子ブランド理論」でいうところの明太子のレシピにあたるようなものだ。入会基準の多くはフィンランドのサウナに近い環境を作りだすための項目になっている。
林氏が自ら呼びかけていった結果、十勝サウナ協議会には北海道ホテルと十勝ガーデンズホテルのほか、十勝サホロリゾート、プレミアホテル-CABIN-帯広、観月苑が初期に加盟。その後も十勝サウナ協議会への参加施設は増えていき、現在は10の施設が加盟している。
十勝に誕生した随一の絶景サウナ
また、十勝サウナ協議会の他にもサウナの熱は波及している。ととのえ親方が参加した2018年末のますらお会でいち早くサウナにハマった人物がいた。十勝しんむら牧場の代表取締役の新村浩隆氏だ。
4代目として牧場を経営する新村氏は持続可能な酪農を目指し、放牧で牛を飼育。そのために25年近く土壌分析に基づいて土づくりをしてきたという。乳製品の加工・製造も手掛けるほか、牧場ではカフェやバーベキューを楽しむこともできる。
そんな十勝しんむら牧場に2019年にできたのが、牧場に設置されたミルクサウナだ。ちょうど目線の高さにある大きな窓からは、夏は青々と茂った牧草地を、冬は一面の雪景色を一望することができる。
サウナで温まった体は屋外の水風呂で冷やし、ウッドデッキで十勝の自然を全身で感じながら外気浴を楽しめる。
「ととのえ親方が来たときに、みんなで正しいサウナの入り方を教えてもらって。それまでは自分もサウナに特に興味なかったんだけれど、そこで目覚めてしまったんですよね。
そのとき、冬で気温が氷点下5度以下だったのに、サウナに入って、水風呂に入って、裸で外にいると、『気持ちいい』という感覚になった。コートを着ていても寒い時期なのに、普通ではありえないですよ。そこからどんどんサウナの良さを知って、ハマっていきました。
最初はお金をかけないでサウナをはじめようということで、コンテナを改装してサウナをはじめることにしたんです。今のミルクサウナは2号機になります」(新村氏)
見事にサウナにハマった新村氏。次は自身が伝道師となって、サウナの正しい入り方や素晴らしさを周囲に伝えていった。
そしてそれはサウナ施設だけでなく、周辺グッズへと波及していく。新村氏は小森華生氏と一緒に2020年3月にサウナグッズブランド「サウナモンスター」を立ち上げた。メリノウール(羊毛)ですべて手作業で作られるサウナハットはサウナ愛好家のなかで知る人ぞ知る人気のブランドになっている。
「私も新村さんと同じ時期に林社長からサウナを勧められて。次第に毎日サウナに通うようになりました。
でもロウリュの蒸気を浴びると息苦しくなってしまう。そのときに新村さんが口や鼻も保護できるサウナハットをつくったらいいんじゃないかと、試作品をつくっていたんです。その羊毛のサウナハットを被ってみたら、全然違ったんですよね。
それで私はサウナハットをつくるための技術を磨きました。もともとは自分たち用に作りはじめて、それが徐々に周囲の人のためにもと広がっていき、サウナモンスターというネーミングでブランドを立ち上げることになったんです」(小森氏)
現在は5人の作家の手作業でサウナハットを生産。これまでに2500個もの帽子を作ってきた。サウナハットのデザインはオーダーメイドのものを除いて、5人の作家の自由。地元に住むサウナ好きの作家たちがそれぞれの個性を生かした1点もののデザインを一つひとつ手作業で仕上げている。
素材となるメリノウールは遮熱効果が高いほか、抗菌作業も高く、臭いも不思議なほど気にならないという。
サウナモンスターのようなグッズ展開のほか、しんむら牧場に訪れたサウナ客は、バーベキューやカフェも利用していくなど、サウナは着実に周辺にも経済効果を生み出している。
「十勝にサウナが多くなって面展開できるようになって、本州からも“サ旅”で来るかたが増えています。道東も含めて2泊3日で訪れて1日に2~3ヵ所のサウナを巡るという方たちが多い印象です。
街中だけでなくて、ここのような牧場でアウトドアサウナを楽しめるような場所だったり個性豊かなサウナが増えていくと、十勝サウナ協議会が目指すようなサウナ王国“サ国”に近づいていくんじゃないでしょうか」(新村氏)
全国からの目的地になれるサウナ、アヴァントが始動
林氏が構想した「博多の明太子ブランド理論」は、地元事業者がそれぞれの味付けでサウナをつくっていくことで十勝にサウナの市場をつくりあげていくというものだった。
そして、“元祖フィンランド式サウナ”の北海道ホテル、“絶景アウトドアサウナ”のミルクサウナと、十勝にはサウナの多様性が生まれつつある。
この多様性が十勝管内での宿泊を増やし、地域にさらなる経済効果をもたらすというのが林氏の目論見だ。
「サウナは面白くて、自分の好きなサウナを見つける楽しさがあるんです。1日では巡りきれないからと、宿泊してもらえると地域に落ちていくお金が全然違うんですよ。
日帰りだと、札幌からくるかたが多いのですが、そうすると、朝起きて出発して、昼食を食べて、夕食を食べて帰る。昼食と夕食でしかお金が落ちていかないんですよね。
でも、1泊すると、昼食、夕食、宿泊代、翌日の朝食と昼食、一気にお金が落ちるポイントが増えるわけです。これが2泊になるとさらに倍々で増えていくことになります」(林氏)
十勝のサウナの多様性の象徴ともいえる、3年越しで実現したプロジェクトがある。林氏がフィンランドのルカでも体験したアヴァントだ。アヴァントは冬の期間に凍った湖に穴をあけ、サウナで体を温めた後、湖の水に浸かりクールダウンするというものだ。
「ますらお会で集まっているときに、克彦さんがフィンランドで体験したアヴァントの話になったんです。
氷点下の環境で湖の水に浸かることになるわけなので、アヴァントには徹底した安全管理が必要になります。でも、僕たちTAC(とかちアドベンチャークラブ)は、いろいろなアクティビティを提供しているので、人命を守るスキルは持っている。それで『いいね、やれるかもね』と」(TAC代表・野村竜介氏)
TACは十勝管内の新得町で、夏はラフティング、カヌー、冬はバックカントリースキー、スノーシューなどのアクティビティを提供する会社。同社も十勝の観光事業者に共通する冬場の稼働率に課題があった。
「年間の仕事の9割は夏のアクティビティになります。冬場にもアクティビティを提供しているのですが、夏と比べると数十分の一くらいにしか仕事になりません。
せっかく良い人材を雇用しても、年間で仕事が安定していないから雇用を維持することもできないんです。
冬場はスキーやスノーボードのように、僕らのアクティビティを目的に旅行に来てくれるというのはなかなかなくて。TAC自体が十勝に来てもらう目的になれるような、そんな何かを考えなくてはいけないというのは、ずっと課題だったんですよね」(野村氏)
林氏、後藤氏、野村氏らが主要なメンバーとなり、後藤氏が社長を務めるホテル十勝屋が運営する「くったり温泉レイク・イン」の目の前にある人造湖で、まずは仲間内で試してみようという話に。
フィンランドでは伝統的に行われていることとはいえ、本当に安全を保証できるのか。事業化は慎重に進められた。
「湖に沈んでいきそうな人がどうするのか。お客様が健康上支障をきたしたらどうするのか。僕の担当は安全管理だったので、あらゆる事態をイメージしました。
ロープを穴の周りに張ってみようとか、じゃあそのロープを固定して長さを調整するためにどうするのか。もしもお客さんが沈んでしまったときのために網を張っておけば引っ張り上げられるんじゃないかとか。
健康面も日本サウナ学会の代表理事をしている医師の加藤先生に初回から参加いただいて、さまざまな助言をいただきました」(野村氏)
仲間内でアヴァントをはじめてから3年後。度重なる実証実験を経て、ようやくアヴァントを事業化することに。日本で本格的なアヴァントを体験できるとあって、2022年は2ヵ月で約350人、2023年もすでに約650人が参加。
1人2万円という安くない金額設定にも関わらず、現在、全国から問い合わせがきているという。北海道ホテルの元祖フィンランド式サウナ、しんむら牧場の絶景ミルクサウナ、そしてこのアヴァント。
目的地として訪れたくなる強力なコンテンツ、そして宿泊をして巡りたくなる多様性が、十勝のサウナ市場に生まれつつある。
サウナ連携は十勝を越えて北海道全域へ
現在も十勝サウナ協議会へ加盟する企業は増えており、十勝のサウナ熱は上がっていく一方だ。後藤氏は十勝でサウナによる地域振興が成功しつつある要因を次のように話す。
「1つにはスピードがあると思います。サウナをテーマにした地域振興団体は十勝サウナ協議会が日本で初めてでした。サウナブームが到来してすぐにパイオニアとして活動できたのは大きいのではないでしょうか。
そして、それを支えたのは横のつながりです。サウナパスポートにしても、アヴァントにしても十勝の事業者同士のつながりがあったからこそですから」(後藤氏)
林氏は今後の展開について、十勝を越えた広域連携へ意欲を見せる。
「実は日本のサウナの発祥が根室だということが分かったんですよ。 ラクスマン来航の1792年に日本で最初のサウナ小屋が建てられていたらしいんです。
今後は北海道ガーデン街道の応用で、サウナ発祥の地である根室、北海道でサウナの聖地と言われている札幌の白銀荘、あと僕もプロデュースで関わっているのですが2023年3月にサウナを開業予定の東川町。これらのより広域な地域と連携していくことで道内への“サ旅”を促進していくことができます。
願わくば、十勝そして北海道ホテルがその起点になることができればと考えています(林氏)
(文:野垣映二 写真:STUDIO ma_do_k_)