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「POTLUCK AWARD 2025」グランプリの行方は?地域の挑戦者の白熱のプレゼンをダイジェストでお届けします!

2025.10.23(木) 15:44
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「POTLUCK AWARD 2025」グランプリの行方は?地域の挑戦者の白熱のプレゼンをダイジェストでお届けします!

「POTLUCK AWARD 2025」最終審査会が、2025年10月7日、東京ミッドタウン八重洲で開催されました。

全国各地から集まった100件を超えるプロジェクトの中から、厳正な書類審査を通過した12組のファイナリストが集結! 地域で活動する審査員と多くの聴衆を前に、白熱のプレゼンテーションを繰り広げました。

審査員による議論の末、栄えあるグランプリには、岡山県西粟倉村から参加した株式会社点々が輝きました。準グランプリには、福島の復興を力強く牽引するOWB株式会社が選出。また、会場の参加者から最も多くの支持を集めたオーディエンス賞は九州移住ドラフト会議(九州地域間連携推進機構株式会社)が獲得し、さらに審査員たちの議論の中で急遽設けられたPOTLUCK特別賞がポケットサイン株式会社に贈られました。

本記事では、受賞企業の白熱のプレゼンテーションと地域経済創発の新たな“うねり”が生まれた一日の様子をダイジェストでお届けします!

年に1度、地域のニュースターが生まれる日

10月7日、東京ミッドタウン八重洲内の会場には、12時の開場と同時に多くの人々が訪れました。参加者はそれぞれ、自身の名前と活動地域を記したステッカーを身につけており、会場の参加者が全国津々浦々からやって来ていることが一目で見て取れます。

当日は「POTLUCK AWARD2025」の最終審査会のほか、4F会場では各地域のプレイヤーが登壇するトークセッションも開催。観光や一次産業、地域副業、地域金融などをテーマに、地方創生の現場の実践知が共有されました。

また、恒例となった参加者が持ち寄った地域の逸品が並ぶ「POTLUCKコーナー」や、地域の食材を味わえるフードブースも大盛況。プレゼンターや来場者が料理を片手に語り合う姿が随所で見られました。

「POTLUCK AWARD2025」最終審査会がスタート!!

メインイベントとなる「POTLUCK AWARD2025」の最終審査会では、一次選考を通過した12組のファイナリストが事業にかける想いやビジョンを語ったのに加え、審査員との質疑応答では鋭い問いが投げかけられました。時には事業を成長させるための核心に迫る議論へと発展するなど、これからの地域を会場全体で考える、創発的な場となりました。

実際のプレゼンテーションの話の前に、まずは全国から集まった100組以上の応募の中から最終審査へと駒を進めた12組の挑戦者をご紹介します!

OWB株式会社

原発事故の避難指示区域となった南相馬市で「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」ことを目指す。

株式会社点々

20世帯38人の限界集落を拠点に、平飼い養鶏から始まる資源循環と風景づくりに取り組む。

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児童養護施設で育った若者と担い手不足に悩む地域を結ぶ移住支援プログラム「つなぐらし」。

一般社団法人キタ・マネジメント

愛媛県大洲市の歴史的資源である古民家を活用した官民一体の観光まちづくり。

株式会社Compath

北欧の教育機関をモデルに、対話を通じて地域社会の新たなモデルを創る大人の学び舎。

株式会社Planet Labs

歴史的建造物を国内外の支援者と「共同所有」し、未来へつなぐ不動産ファンド。

九州移住ドラフト会議

移住をプロ野球のドラフト会議に見立て、楽しみながら地域との縁を生み出す促進イベント。

ポケットサイン株式会社

自治体と住民をつなぎ、災害時にも平時にも役立つ「地域で育てる防災スーパーアプリ」。

AGRIST株式会社

農業の担い手不足などの課題を、自動収穫ロボットやAIで解決するローカルスタートアップ。

株式会社ACTA PLUS

廃棄物にアートの力で価値を与え、サステナビリティを「正論」から「憧れ」へと昇華させる。

株式会社レジスタ

全国の寺院が持つ空間や歴史を「地域資源の編集ハブ」と捉え、新たな共創を生むプラットフォーム。

こども救命士になろうプロジェクト

子どもたちが自分や大切な人の命を守る力を身につける体験型医療教育活動。

そして、最終審査員は地域経済のプロフェッショナルである以下の5名が務めました。

最終審査員

木下 斉氏(一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事)
島田 由加氏(一般社団法人日本ウェルビーイング推進協議会 代表理事 / 株式会社YeeY 共同創業者・代表取締役)
瀬﨑 公介氏(株式会社シークルーズ 代表取締役 / POTLUCK AWARD 2024 グランプリ)
内藤 佐和子氏(前徳島市長 / 日本テーマパーク開発株式会社 代表取締役社長)
山中 大介氏(株式会社SHONAI 代表取締役)

5名の審査員によるオープニングセッションで幕を明けた会場は開始早々に入場が規制されるほどの大盛況。オープニングセッションが終わり、各団体のプレゼンテーションの時間になっても、会場から賑わいがなくなることはありません。プレゼンターの熱気がびしびしと伝わってきた会場では、拍手と時には笑いが起こり、終始一体感の感じられる時間でした。

それでは、各賞に輝いた受賞企業のプレゼンテーションをダイジェストでご紹介します!

【グランプリ】株式会社点々|卵一個からはじまる、限界集落の未来

「鶏は中山間地農業の救世主だ」。力強い言葉でプレゼンを始めたのは、岡山県の限界集落で循環型農業に取り組む株式会社点々の羽田 知弘さん。人口約1300人の西粟倉村、その中でも20世帯38人という小さな集落を舞台に、平飼い養鶏を起点とした資源循環を目指しています。

日本の卵は自給率97%を誇る一方、飼料の自給率はわずか12%しかありません。また、鶏の本来の生態を阻害するケージ飼いの割合は99%。この現状に、羽田さんは問題意識を感じていました。

「地域には捨てられる宝が山のようにある」ことに気づいた羽田さんは、養鶏を取り巻く課題の解決策として、規格外の米や醸造所のビール粕など、地域の未利用資源で自家配合の発酵飼料を開発。

鶏が自然に近い環境で暮らし、その鶏糞は堆肥となって田畑を豊かにし、そこで採れた作物がまた鶏の餌になる。そんな循環モデルを生み出しました。「美しい風景を私たちの代で終わらせたくない。そのためには暮らしを続けるための仕事が必要」と語る羽田さん。

卵1個100円という高価格で販売することに成功し、ミシュラン掲載レストランにも納品。今後は宿泊施設やレストランの開業も視野に入れ、半径1kmの集落を集中的に開発することで、「自販機すらない集落で売上1億円」という目標を掲げ、「卵1個から地域は変えられる」と力強くプレゼンを締めくくりました。

プレゼン後の質疑応答では、審査員から事業の核心に迫る質問が次々と投げかけられました。山中氏が「儲かるんですか?」と単刀直入に収益性を問うと、羽田さんは平飼い養鶏の利益率の高さを説明。内藤氏からは、価格競争力についての質問のほか、「那須の地域でも考えたい」とその場でコラボレーションの打診が飛び出す場面も。

さらに山中氏は、山形県の燻製卵「スモっち」をベンチマークとして挙げ、「卵のまま売るのではなく、加工をすることで付加価値を上げられる。海外販路も広がる」と具体的なアドバイスを送りました。

これには他の審査員も頷き、卵を使ったスイーツなど、高付加価値商品への展開に期待を寄せる声が上がりました。

【準グランプリ】OWB株式会社|絶望のループを逆転させる、福島の希望

原発事故で約6年間の避難生活を経験したOWB株式会社の和田智行さんは、自分の住みたいところに住むこともできない理不尽と向き合い、「真に自立した地域とは何か」を問い続けた末に、ゴーストタウンのようになっていた故郷・南相馬市小高区に戻り創業しました。

ミッションは「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」こと。生活インフラが失われた地域で、まずは食堂やスーパーを立ち上げ、コミュニティ再生の拠点を作りました。さらに、若者が働きたくなる魅力的な仕事としてガラス工房を設立。新卒採用するまでに成長しています。

自分たちだけでは限界があると考え、起業家誘致・育成事業にも着手。これまでに30の事業を生み出し、「小高で起業するのは当たり前」という文化を醸成してきました。和田さんは「企業が撤退したらまた地域が突然死してしまう。同じ構造の地域に戻してしまったら、僕らが被災した意味がない」と考え、企業誘致に頼るのではなく、地域の人々が主体的に課題解決する方法を選択しています。

質疑応答で印象的だったのは、木下氏の「なぜ『ここで起業したい』という人が来るのか」という問いへの答え。和田さんは「この街は住民がゼロになったからこそ、新しい社会をゼロから立ち上げることができる日本で唯一のフロンティアだと発信している。それに共感した人たちが来る」と話しました。以前は100人中100人に笑われた挑戦が、今では「小高ってそういう街だよね」と言われるまでになったそう。その力強い歩みが審査員の心を動かしました。

【オーディエンス賞】九州移住ドラフト会議|地域との縁を育む、最高の”コント”イベント

「第一巡選択希望選手〜」という、本物のドラフト会議さながらの呼び出しでプレゼンを始め、会場の空気を一気に掴んだのは「移住業界最大かつ最高のコントイベント」を10年間続けているという「九州移住ドラフト会議」のコミッショナー、木藤亮太さんと板松白根さんです。

地域と人のマッチングをドラフト会議になぞらえて、移住を希望する「選手」を、九州各地域の「球団」が指名するこのユニークなイベントは、「移住は重い決断」というイメージを覆し、「地域側が『ぜひあなたに来てほしい』と伝えられる場を作りたかった」という逆転の発想から生まれました。

指名会議の後は「ペナントレース」と称した交流期間を設け、楽しみながら関係性を育みます。「指名漏れはない。安心です」という言葉通り、参加者全員がどこかの地域と縁を結べる仕組み。10年間で70もの自治体が参加し、40名以上が移住に至りました。

参加者全員を巻き込む熱量と、何よりプレゼンター自身の楽しむ姿勢が会場の共感を呼び、見事オーディエンス賞に。昨日入籍したばかりという板松さんのサプライズ報告も、会場を温かい笑いで包みました。

【POTLUCK特別賞】ポケットサイン株式会社|地域で育てる、いのちと暮らしのプラットフォーム

審査員たちの議論の中で「どうしても賞を贈りたい」と急遽設けられたPOTLUCK特別賞。その栄冠を手にしたのは、宮城県と共同で「防災スーパーアプリ」を開発するポケットサイン株式会社です。

代表の梅本滉嗣さんは、災害時の避難所運営が未だに「紙」で行われ、支援の遅れに繋がっている課題を指摘。その解決策として、マイナンバーカードで正確な情報を登録し、誰がどこにいるかを瞬時に把握できるアプリを開発しました。

しかし、このアプリの真骨頂は「フェーズフリー」という考え方。防災機能だけでなく、地域通貨や健康ポイントといった日常的に使える機能を搭載することで、「いざという時のために」ではなく「いつも使う」アプリとして普及させる戦略です。すでに宮城県では人口の約3割にあたる66万人以上が利用し、サービス開始から2年で全国の利用者は77万人に達しています。

この事業のスピード感とスケール感に審査でも「ビジネスとしてスケールする可能性が非常に高い。かつ、地域に与えるポジティブな影響も期待できる」と評価。特に「なぜスタートアップが宮城県と密にパートナーシップを組むことができたのか」と、その事業推進力は審査員室でも大きな話題になったそうです。

社会性と経済性、大切なのはどっち?

審査結果を発表する授賞式での審査員の山中さんの第一声は「本当に激論でしたね」という言葉でした。社会性と経済性のどちらを重視するべきか。多様な事業が並ぶ中で、審査員が重視したのは、そのバランス感覚と、挑戦者自身の持つ熱意でした。

木下さんは、準グランプリを受賞したOWBを「事業をしたければ立地の良い場所を選んでやればいい。でも『この地域でやりたい』という覚悟を持った人が地域にとどまり、地域を変えていく。OWBの取り組みは、まさにその勇気を与えてくれる」と評価。

グランプリに輝いた点々については、瀬崎さんが「経済に偏りすぎず、課題解決、持続可能性、経済の循環性といった要素を最も具体的に体現していた」とコメント。さらに山中さんは、「何をやるかも大事だが、誰がやるかもすごく大事。プレゼンターの羽田さんのピュアな情熱と、フィードバックを真摯に受け止める姿勢に未来への可能性を感じた」と、挑戦者の人間性にも言及しました。

授賞式の後は、恒例となったアフターパーティー。POTLUCK AWARD2025ファイナリストと会場に訪れた皆さんで記念撮影をパチリ!

今回集まった挑戦者たちの熱意は、確実にいた一人ひとりの心に火をつけ、地域経済創発の次なる連鎖を生み出していくことでしょう。もしかしたら、今回は聴衆だった人が、次回のPOTLUCK AWARD2026のファイナリストとして参加しているかもしれません。

POTLUCK AWARDは来年も開催予定です。ご応募いただいた皆様、そしてご来場いただいた皆様、改めてありがとうございました!

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